Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。

未消化のまま

eureka742007-03-03

 妻は休日出勤。父子で過ごす。実家へ行き散髪を実施。2ヶ月ぶりですっきりする。

 本田由紀『多元化する「能力」と日本社会』を読了。問題意識の強さに圧倒される。知的な興奮を感じる久しぶりの本だった。賞を取るのも分かるような気がする。しかし中味については未消化のままである。まずは自分がいかに標準的でないかということを知った。たとえば次のようなくだりがあります。

 「家事スキル」が高い者、また「ポジティヴ志向」が強い者ほど収入が高い(180ページ)

 これなんかまったくあたっていません。私は家事は全般的にやりますが、収入は高くないです。こんなテーゼが登場します。実証的な研究なのでありがたいとは思いますが、そうではない人もいるだろうと思います。

 家族を営むことや、子どもが育つことは、他のものと似ているようで絶対的に違うものなんじゃないかと思っているので、どうもこういう抽象的な家族論や教育論にピンときていない自分がいます。だから私は研究者という道を断念したのだろうとも再認識しました。

 本田が批判しているハイパーメリトクラシー(コミュニケーション能力や対人関係能力、よりよく生きる能力)は、その能力自体を個々人が自分の生きていく過程のなかで獲得することは問題はないのではないかと思います。それが人間を外側から強制する型のようなものになったときに息苦しさが発生することのほうを問題にしているのだろうと思いました。二つの問いが一緒に論じられているような感があって、その辺が混乱の素かなとも思います。

 解決策としての「専門性」というのはちょっと苦しいかなという印象です。高等教育論としてはいいのかもしれないけれども、社会思想としては反動的な印象しか残りませんでした(反動的な思想の持ち主だと思いませんが)。

 ちゃんとした批評を書いてみたいとも思わせる著作です。社会学が社会に挑んでいるという意味では大いに評価すべき作品だと思いますのでお勧めしたいと思います。

 最後に私の仮説。実証的ということにやたらとこだわる人ほど、観念的・情熱的であったりするものです。この人も多分そうなんだろうと思いました。

 国営放送の討論番組。もう語るのはやめていいんじゃないか。語っても何も生まれない。考えさせてほしいと思う。