Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。

実践と論理の調和

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

 これまで読んだ貧困論のなかで最もぐっときた1冊。実践と論理の調和に射たれたのだと思う。貧困という言葉がいかに問題を矮小化させてしまっているのかを思った。つまり、貧困という言葉から惹起されるイメージは、戦争時や敗戦直後の焼け野原での生活をイメージしてしまう人が多いはず。特に政治家とか後期高齢者の人々は自分自身がそういう貧困を生きてきたためにどうしてもそういうイメージしか持てないのではないでしょうか。「貧困+自己努力=高度経済成長」という数式を生きてきた人に、21世紀型貧困問題は問題として認知されない可能性が高いということだと思います。「貧困」に陥る人に複雑な事情があるように、自己責任論に陥ってしまう事情があるはずです。

 憲法25条を保障するための生活保護制度を守るためには、福祉事務所の面接受付を民間委託するしかないと思います。いまの制度は「なるべく支給しない」という考えに基づいて運用されています。「なるべく支給する」という発想を組み込まないかぎりだめです。これは生活保護だけではなく、福祉行政全般にいえることです。行政権限とソーシャルワーク(援助)を分離することが鍵だと思います。

 この著者がやっていることはまさにソーシャルワークそのものだと思いました。ソーシャルワークは語るものではなく、実践するものだということを教えてくれます。