Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。

『チョコレート・ドーナツ』ー養子を扱った映画作品を振り返る⑨

 


映画『チョコレートドーナツ』予告編 

 ここ最近で最もヒットした養子を扱った作品かもしれません。LGBTと養子というテーマを上手に組み合わせたドラマです。

 

 ラストは大変せつなく、胸が締め付けられるような終わり方でしたが、ドラマとしては大変見事な終わり方だと思いました。

 

 LGBTというカテゴリーに入る方々みんなが、子育てが可能かと言われれば、そうでもないでしょう。うまくいかない場合もあるかもしれません。

 

 反対にヘテロセクシャルだって、子育てがうまくいかない場合だってたくさんあります。要するに性差に関係なく、その二人の間に信頼関係があり、子どもを養育する余裕や、子どもという存在を含んだ人生を二人で作り上げていくのかどうかが大事なのだと思います。

 

 映画の主人公二人にはそれがあるように思えました。その二人がたまたまLGBTというカテゴリーに入るだけの話です。

 

 しかし、社会は二人の個別性を踏まえることはほとんどありません。類型化されたカテゴリーのなかで社会生活は進んでいきます。そのことが社会を硬直化させていくのかもしれません。

 

 まずは日本の社会にはLGBTというカテゴリーに入る人たちがたくさんいて、社会の類型化されたカテゴリーの一つとして認められる必要があるのだと思います。

 

 それは日本の社会に養子という制度で結ばれる親子がいるという現実も同じだと思いました。

 

『めぐりあう日』ー養子を扱った映画作品を振り返る⑧

 今回はウニー・ルコント『めぐりあう日』です。


フランス映画『めぐりあう日』予告編

 この監督自自身が養子であり、前作『冬の小鳥』も養子を主題にした作品でした。


映画『冬の小鳥』予告編

 『冬の小鳥』が子どもを主人公にしていますが、『めぐりあう日』をその子どもが大人になった世界を描いているようなつながりを感じさせます。今回の作品は、養子として育った女性の物語です。

 

 一つ前に紹介した『愛する人』と比較すると、フランス映画らしい静謐なショットが連なっていきます。まずはショットの力強さがとても印象的です。ゴダール諏訪敦彦監督と組んでいるキャロリーヌ・シャンプティエが撮影監督でした!

 

 内容ですが、養子として育てられた成人女性が、実母を探していくというのが基本のストーリーです。物語に決着を付けるためには仕方がないのかもしれませんが、母子の出会い方があまりにも偶然すぎて、個人的には物足りなさを感じました。

 

 登場人物一人一人の演技がものすごくよいだけに、ストーリーの安直さが逆に浮き出てしまうような印象を持ちます。

 

 『愛する人』の時もそうでしたが、養子を扱う物語のときには、物語をどう閉めるのかというかで、作品の世界が決まるような気がします(そこに監督の作家性が出る)。

 

 観ておくべき作品であることは間違いないです。おすすめです。

 

 

『愛する人』ー養子を扱った映画作品を振り返る⑦

 2009年に公開されたアメリカとスペインと合作作品です。

 

 養子縁組をめぐる大人のドラマです。このドラマの軸は、若年で出産しその後養子縁組へ託した女性が、その後立派な女性となり、再び養子縁組に自らの子どもを託すという反復の物語にあります。

 

 実母と実子はもう少し直接的に絡むべきではなかったのかなと思います。絡まないからこそいいのだという見解もあるかもしれませんが、ドラマとしてはもう少し近づける設定があってもいいのではないかと思います。

 

 でも画面の雰囲気と抑えめな音楽とはとてもよいと思いました。

 

 ナオミ・ワッツのできる女演出がとても素晴らしくて、イヤらしくて、切なくて最高でした。ナオミ・ワッツを生んでくれた母との絡みがあれば、さらにドラマティックになったのではないかと思います。


映画『愛する人』予告編

『少年と自転車』ー養子を扱った映画作品を振り返る⑥

 カンヌ国際映画祭常連のダルデンヌ兄弟の2011年の作品です。

 

 これは養子というか里親の話です。最初は週末里親という枠組みで出会うのですが、時間の流れと共に一緒に暮らすようになっているようです。

 

 まずは少年の佇まいや表情が素晴らしいです。これはダルデンヌ兄弟の演出の凄さだと思いますが、寡黙だけれども表情で置かれている孤独がビンビン伝わってきます。

 

 あえて厳しいコメントを付けるとすれば、少年と里親が警察に行く直前に少年が謝るシーンがあるのですが、あそこは台詞ではなく、動きやしぐさで演出してほしかったです。人への基本的な信頼感のない子どもにとって謝罪の言葉を口にするというのは、とても大変なことだと思うからです。

 

 上映時間が87分というのもコンパクトで素晴らしい編集だと思います。長くしようと思えばいくらでも長く出来る内容だとは思いますが、思い切った編集で90分以内に収めているのも映画の質を高めていると思います。

 

 ダルデンヌ兄弟の作品は、日本で公開された作品はほぼすべて観ていると思うのですが、少年少女の演出が本当に素晴らしいと思います。

 

 養子や里親を扱った作品としては、抜群のクオリティーを備えた作品だと思います。未見の方はぜひご覧になってください。


映画『少年と自転車』予告編

『ホワイト・オランダー』ー養子を扱った映画作品を振り返る⑤

 2003年で日本で公開された作品です。これはなかなか見応えがありました。

 

 毒を持つ花(ホワイトオランダーという品種があるようです)の美しい母親と、それに翻弄される娘のやりとりを軸に物語は進んでいきます。

 

 母親が直接的に娘に関与することができないので、娘は養子に出されることになります。複数の里親宅を転々とすることになるのですが、その度後に、養母と娘の間の女性同士の距離感が狂っていき、本児は安住の地に収まることはできません。

 

 当然娘の生活は荒れ始めるのですが、それを髪型や化粧だけで演出しているところがまず印象に残ります。それを観るだけで精神の荒廃が一発で理解ができます。 

 

 養母もまた複雑な事情を生きている生身の人間として描かれているところも魅力的な演出だと思います。決して聖人君主としては現れません。

 

 母と娘、養母と養子という女性同士の関係性が入り組んだ世界が描き出されています。母親のミシェル・ファイファーはやったことはとんでもないことですが、娘に語る言葉はあまりにも的確すぎて、観ている者を釘付けにします。この母親像は本当に怖いと思いました。

 

 ここまで観たなかで一番出来よい作品だと思います。


White Oleander Persuasive Video

『しあわせの隠れ場所』ー養子を扱った映画作品を振り返る④

 2009年に一般公開されています。実話ベースの養子のアメリカンドリームです。

 

 一方の主人公である不遇な黒人のうつろなまなざしが印象に残ります。これこそがアメリカ映画という感じの展開ですが、最後にはハッピーエンドが絶対待っているので、安心して観ていられるのは大事なことかなと思います。

 

 アメリカと日本ではシステムが違うので、一概に比較はできないですが、アメリカの方が養子に対するハードルが低いような気がしますね。家族観の違いも大きいと思います。

 

 現実にはこんなに簡単に他人と一緒に暮らすことができるのかなと思います。特に未成年が他人と暮らしていたら、また別の騒ぎ(誘拐とか搾取)とかになるんじゃないかとも思います。設定の大雑把さに少し残念さな印象は残りました。

 

 養子という現実を広く知ってもらうためのメディアとしては、こういう語り方は適当だと思いました。

 

 サンドラ・ブロックは、サンドラ・ブロックのままでしたねw。


The Blind Side 「しあわせの隠れ場所」

 

『草原の椅子』ー養子を扱った映画作品を振り返る③

 今回は『草原の椅子』です。宮本輝原作の小説の映画化だそうです。

 

 赤の他人である子どもを育て、養子にしようとする父子のお話です。そもそもその設定自体がアクロバットな印象を残します。赤の他人が子どもを育てるという設定自体が現実離れしているように思います。

 

 エンドクレジットに複数の児童養護施設の名前が出ていますが、本編では「施設」は避けられるべき場所として描かれており、本来の役割とは違う扱われ方をしているのではないかとも思います。

 

 今回一番気になったのが、実父母の演出のされ方です。役者たち自身のせいではありませんが、まったくリアリティーがなかったです。演出ミスだと思います。

 

 実父母をクレイジーに演出することで、子どもの悲惨さを浮かび上がらせる方法ははっきり言ってダメだと思いました。

 

 作り物だからそこまで厳しく言わなくてもと思われる方もいるかもしれませんが、リアリティーを欠いてはドラマのクオリティーは高まらないと思います。そして、139分は長過ぎです。

 

 黒木華の娘役はよかったです。複雑な文脈を演じることができる素晴らしい女優さんだと思います。

 


映画『草原の椅子』予告編