Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。

すべての人を包み込む奇跡の居場所ー重江良樹『さとにきたらええやん』


大阪市西成区釜ヶ崎にある「こどもの里」に密着!映画『さとにきたらええやん』予告編

 

 大阪市西成区は、日本三大ドヤ街の一つ釜ヶ崎を抱えている。その釜ヶ崎のなかにすべての子どもたちを包み込む居場所がある。それが今回の作品に登場する「こどもの里」である。

 

 行政上の区分をすれば、里親があり、ショートステイがあり、学童保育があり、家族相談の機能があり、子ども食堂がある。

 

 しかし、全体は部分の総和以上であり、単純な足し算をしただけでは終われない場所の魅力が画面に溢れている。

 

 このような場所は、作ろうと思って作ることができるものではない。いろんな偶然と出会いと時代の条件などが織り込まれた一つの奇跡のようなものである。

 

 私はこのような作品を「奇跡の現場系ドキュメンタリー」と命名したいと思う。

 

 最近の作品としては『隣る人』をこのジャンルに入れてもよいと思う。けっして二度と再現不可能であるからこそ、その証をきちんと後世に残していくべきだと思う。

 

 私個人は、こういう現場の内部に入ることに強い抵抗感を抱いてしまう。正直少し苦手である。距離を置きたくなってしまう。

 

 人を惹き付ける強烈な磁場というのは、強烈な求心力と同時に遠心力も働くのだと思う。私には遠心力が働いてしまった。

 

 私は少し離れた場所から、この奇跡を見つめた気がする。遠心力に絡めとられた人をも包み込んでほしいと思う。それが本当の居場所だと思うので。