Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。

【短評】鵜飼奈津子2015「児童養護施設に暮らす子どもと心理療法、そして職員の支援」、『子育て支援と心理臨床Vol.10』

 精神分析的心理療法プロパーによる児童養護施設論である。面接構造を守り、施設内で心理療法の構造を守るべきという立場からの論陣である。

 

 まあこうなれば理想的かもしれないけれど、それを許さない児童養護施設の構造自体を問題にすべきではないかと思います。

 

 現場に分け入って、そこから拾い集めた心理臨床的な知を集めた内海新祐『児童養護施設の心理臨床』をその対局に位置付けることができるだろう。

 

児童養護施設の心理臨床: 「虐待」のその後を生きる (こころの科学叢書)

 

 児童養護施設の現場はまだ整地されておらず、鵜飼が言うようなセッションが成立するまでには長い時間が必要だろう。理想を語り続けることも現場で格闘し続けることもどちらも大事である。 

 

 精神分析の歴史に重ねて述べると、アンナ・フロイトとメラニー・クラインの間で起こった仲違いが、児童養護施設の現場のまわりで起こることが不幸であるということを指摘しておきたい。当時そのことに最も心を痛めていたのは、ウィニコットだと思われる。