官僚制と専門性の逆立する関係
児童相談所は都道府県役所の出先事業所です。児童福祉法上は専門機関でもありますが、役所組織の末端の一つでしかありません。官僚制のなかで専門性はいかに向上され維持されるのかという問いを立てないといけないと思います。
たとえば、官僚制は役人が一つの職場にいることを良しとしません。そこには癒着や停滞が生まれるからです。2年から3年で異動することが一般的です。
一方で、児童相談司は、実務の現場では10年やって一人前という認識が概ね共有されています。普通の役人の5倍くらいの定着が必要です。
官僚制という軸で、児童相談司の育成を考えること自体に困難があるのではないかと思います。
児童福祉司の専門性を高める議論はいくつもありますが、官僚制と専門性の間で考えてないと生産的にはならないと思います。専門性の立場からだけ論じても、まったくうまくいきません。児童福祉司は官僚制の一部であるという根っこには届かないからです。官僚制という観点から児童福祉司の育成を考えないといけないと思います。
詳細はまた別の機会に取り上げたいと思いますが、児童福祉司をしっかり育成していくことは、官僚制にとっては、イレギュラーなことばかりで、官僚制の土台を脅かすようなものになると推測されます。それくらいに専門性の向上の議論は構造的に難しいのではないかと思います。