2)合意形成力
二つ目の力は合意を形成する力です。対話をしながらステイクホルダーの関係者との間で合意を形成していかなくてはなりません。
一人の子どもをめぐってたくさんの関係者がかかわっています。その関係者が合意できるような働きかけなければなりません。交渉力と言い換えてもよいと思います。
たとえば、家庭から子どもを分離するときや、施設から自宅へ子どもを戻すときにこの力が試されます。権限ベースで語ってしまえば、施設入所や退所の権限は児童相談所にあります。なので「児童相談所が入れると言えば入れるし、家庭復帰させると言えば返すのだ」と突っ張ることはできるのですが、それは周囲の関係者は納得しませんし、不安が高まるばかりです。
なぜ入所が必要なのか、なぜ家庭復帰が適当なのかを説得しなくてはなりません。それが子どものためになっているのだということを明確に論じることができなくてはならないのです。
そして、その子どもにかかわるステイクホルダーである関係者(保護者を含む)と協力する関係を構築していくことが必要です。
これは権限ベースでは構築出来ません。コミュニケーションベースでしか構築できないというのが私の実践感覚です。ここが錯綜をしてしまう場合が多いように思います。
ソーシャルワーカーの基本的な援助思想として、エンパワメントという概念がありますが、これは関係者とのネットワークにおいても適用することができます。関係者をエンパワメントして、関係者が一歩踏み込んで、その子どもにかかわることが、結果として子どもとその家族との繋がりを生み出していくことになるのだと思います。
権限を持っている児童相談所が家庭復帰させるというから仕方なく付き合うという態度では、有機的な連携にはならないでしょう。
現場では、ここで書いたような奇跡はほとんど起こらず、不機嫌不愉快な会議が多数繰り広げられていますが、そこも改善していかなければならないと思います。