Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。


 実際に起こったネグレクト事件からインスパイアされた物語。音楽は一切なし。子どもの泣き声と生活音(洗濯機)だけで構成される世界で、子どもたちは徐々に命を削られていく。


 本作品は密室劇であり、カメラが外に出ることは一度もない。カメラも固定されており、顔がしっかり映り込まないシーンも多い。長女は常に全身が映っていて、長女の視線から描かれた世界であるとも言える。


 現実の子どもたちが、あの地獄の中でどんな振る舞いをするのかは誰にも分からない。今回の演出は監督の子ども観でもあるのだろう。私自身は、子どもはこの地獄に置かれたとしたら、絶望して眠るように死んでしまうというイメージを持つ。あんなに気丈に振る舞うことはできないと思う。


 子どもを追い込む演出はできないわけだから、地獄の空間をもっと暗く、陰鬱にデザインすることができなかったかな。部屋に差し込む光が明る過ぎるような気がする。


 児童虐待は家庭のなかで起こり、その実態を見ているのは、そこで生活をしている子どもたちだけだ。見えない世界を見る。児童虐待というのは不可視の問題である。