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施設内虐待という文脈においては、『オレンジと太陽』を想起せずにはいられない。両方とも不幸な事実ではあるけれども、演出という意味では映画としての差ははっきりしている。『オレンジと太陽』の方が映画として明らかに優れている。
それは主人公の演出に出ている。『オレンジと太陽』におけるエミリーワトソンの演技の力と、『トガニ』における顔がきれいな男女の扱いをみれば、歴然である。
『トガニ』において、正義を貫く男女のドラマがあまりにも弱い。きれいな顔の男女を登場させるのであれば、二人の間にそれなりのドラマが絶対が必要だけれども、それが欠如している。正直もったいない。恋愛だけではなくても、二人の間のドラマは絶対に必要である。
暴力は親密性と表裏一体であるというテーゼが正しいとすれば、この作品はそこを汲み損ねている。被害者でかれらは、加害者との親密さを感じながらも、性暴力を受けていたはずだ。そこが捨象されているのもちょっと残念だ。