最後の時間
これからは映画のはしごなんてできないんだろうな。
『ゲルマニウムの夜』と『マンダレイ』。どちらもヘビーな作品。どっぷり光を浴びた感じです。この作品のために建てられた一角座はとても心地よい空間になっていました。映画館のことをよく研究しているという感想です。久しぶりに気持ちのいい空間に入りました。映画は映画館と共にありますね、絶対に。一方日比谷の映画館はただ上品にしているだけで居心地が悪いですね。高級感を出したいならもっと研究しないとダメです。
『マンダレイ』は倫理を扱ったこんな直截的な作品に出会ったことはありません。『ドックヴィル』に劣らず刺激的な作品です。これは〈アメリカ〉の倫理を扱っています。一人ひとりのアメリカ人ではなく、私たちの中にも生きている〈アメリカ〉を救い上げようとしているので、万人に訴える力を得るということでしょうね。第3部は絶対に楽しみです。今回の女優さんもよかったです。トリアーの女優を選ぶセンスに完全に同意します。日本でもこういうブラックユーモアがあってもいいですよね。
虐待を防げた事例がたくさんあるそうな。人智で防げるというという思い込みこそ〈アメリカ」的倫理なのだと思う。虐待問題に心を痛める人こそ『マンダレイ』を見るべきだ。
「命を救う」とか「心を癒す」とかということから自由になること。