【短評】『ちいさいひと』
最近Kindleデビューをしたのですが、最初のダウンロードは『ちいさいひと』でした。最初から最後まで読み通すことができました。
児童福祉司を扱った漫画としてヒットしているようです。こうやって社会的認知が広がっていくわけなので、どのように表象されるのかを意識しながら興味深く読みました。
エピソードについては、実際にあった事件を基にして描かれているので、荒唐無稽という印象は残りません。これは事例を提供した小宮純一さんの功績だと思います。現実とフィクションを繋ぎ止めることに成功していると思います。
描き方についてはドラマティックすぎます。現実はこんなに激しくありません。主人公のようなテンションで仕事をしていたら、心身のバランスを壊してしまうに違いありません。現実はもっと平凡です。
虐待する加害者の描き方がやっぱり一面的で、被害者としての子どもを強調するためにバランスが崩れているようにも思います。加害者と被害者という二項対立で説明できないのが、家族の病理や虐待の本質だと思うのです。このあたりは漫画ではなくて、映像での表象が向いているのではないかと思います。
児童相談所で起こっていることは、確かにドラマの種になりそうなものがたくさんあります。一昔であれば、学校物ドラマのような物語の原石がたくさんあります。
守秘義務の問題もあり、そのまま社会に出すわけにはいきませんが、フィクションとして社会に発信していく価値はあるのではないかと思います。家族の在り方を考えるきっかけになると思います。