Social Worker's Note

社会福祉士です。現場で感じたことや考えたことを発信します。


リンカーンの偉大さを見せつける作品かと思いきや、民主主義は大変だという作品でした。リンカーンでさえ、命を削って多数派工作をして、奴隷解放のための法律を通している。名演説から導かれるようなヒーローではなくて、いろんな人の思いに挟まれながら、少しずつ前に進んでいくリーダーの一人としてのリンカーンでした。これはこれでカタルシスを求める映画としては不満が残るかもしれないですが、誠実な作品ではないかと思います。現実を動かしていくというのはこれくらいに大変なことなんだということをスピルバーグは諦めずに提示したのだろうと思います。


プライベートライアン』とか『戦火の馬』とか見ていると、派手な銃撃戦を見たくなるというものですが、今回は言葉の銃撃戦を見せようとしたのだと思います。実際の銃撃戦は生命を狙いますが、言葉の銃撃戦は相手の精神を狙い、圧倒しようとする。その劇をみせようとしているのだと思います。『プライベートライアン』以上に熾烈であるとも言えるのです。


感動からカタルシスとかとは離れていますが、いまの時代にスピルバーグがこの作品で何を伝えたかったのかを考えてみるべきなんじゃないかと思いました。